高血圧とは
血圧とは、血管内の(血液の有する)圧力のことです。
高血圧は血圧の高い状態が続く病気です。
血圧の値のうち上の血圧が140mmHg以上の場合、または下の血圧が90mmHg以上の場合、あるいはこれらの両方を満たす場合に高血圧と診断されます。
高血圧の診断
血圧には、①病院・診療所などで測る診察室血圧、②自宅で自分で測る家庭血圧、③特殊な機器で1日かけて血圧を測る24時間血圧の3つがあります。わが国では一般に診察室血圧と家庭血圧が用いられます。
診察室血圧が140/90mmHgを超えたら、家庭血圧が135/85mmHgを超えたら、高血圧と診断されます。また、最近では家庭血圧の値の方が高血圧の判定に優先して用いられます。
家庭血圧
最近の研究で、脳心血管病(脳卒中や心筋梗塞など)の発症を予測する方法として、診察室血圧よりも家庭血圧の方が優れていることがわかってきました。したがって、家庭血圧は大切な情報です。
家庭血圧は、朝(起床後、食前・服薬前に1-2分の安静後)と夜(就寝前、1-2分の安静後)の1日2回、座位で測定します。測った血圧値は血圧手帳などに記録し、かかりつけ医の受診の際に医師に見せるようにしましょう。
高血圧の原因
高血圧は、原因がよくわからない「本態性高血圧症」と、特定の原因が明らかになっている「二次性高血圧症」に分類されます。
本態性高血圧症
高血圧症の患者さまの大半がこのタイプで、9割以上を占めています。
両親から受け継いだ遺伝因子に加えて、過剰なエネルギーの摂取や肥満、塩分の多い食事、運動不足、お酒の飲み過ぎなどの環境因子が加わることによって発症する生活習慣病です。
そのため、高血圧発症後だけでなく、予防のためにも生活習慣の改善が重要です。
二次性高血圧症
頻度は少ないですが、手術などによって完治する確率が高く、その診断は重要です。
高血圧の合併症
高血圧によって動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすくなります。
また、脳出血や心不全を起こす可能性もあります。
高血圧は症状がなくても危険です。家庭血圧を測定して血圧を知り、高血圧を見つけましょう。
そして、必ず医師の診断を受けましょう。
降圧療法は、高血圧の重大合併症である脳卒中発症率を35~40%、心筋梗塞を20~25%、心不全の発症を50%以上低下させることが示されています。
血圧のお薬を服用しているときの基本的な注意事項
血圧が下がり過ぎた場合に、めまいや立ちくらみ、倦怠感、眠気などが起こることがあります。
車の運転や危険な作業を行う際には、注意が必要です。
自分がのんでいる薬の種類や主な副作用について、知っておいた方が良いでしょう。
薬を開始してから、または変更してから体の調子が変わったら、医師・薬剤師に早めにお知らせ下さい。
おくすりの種類
◇食事・運動療法を行っても十分な血圧管理が得られない場合に薬物療法を合わせて行います。
◇お薬だけに頼らず、生活習慣の改善が必要です!
おくすりの種類 | 代表的なおくすり(商品名) | くすりの働き *基本的な注意事項 |
主な副作用 |
---|---|---|---|
カルシウム拮抗薬 | アダラート アテレック アムロジン コニール ニバジール ペルジピン ランデル |
末梢血管・心臓の血管を拡げ、血圧を下げたり、狭心症の症状を改善する。 *グレープフルーツジュースはCa拮抗薬の降圧作用を増強するため、グレープフルーツの摂取は避ける。 |
動悸 頭痛 ほてり感 むくみ |
アンジオテンシン 変換酵素(ACE) 阻害薬 |
タナトリル レニベース |
血圧や心臓、腎臓に関係するアンジオテンシンというホルモンを減らすことにより血圧を下げる。 心肥大や心不全・腎障害などに有効。 |
咳(投与1週間~数ヶ月以内で出現するが、中止により速やかに消失) めまい、頭痛 |
アンジオテンシンⅡ 受容体拮抗薬 |
アジルバ アバプロ オルメテック ディオバン ニューロタン ブロプレス ミカルディス |
アンジオテンシンⅡが受容体に結合するのを妨げて、血管を拡張させ、血圧を下げる。 | めまい 頭痛 腎機能低下 |
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI) | エンレスト | アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)の作用に加えて、心臓に負担をかけるホルモン(ネプリライシン)の働きを抑えることで血圧を下げる。 *原則として第一選択で使用しない |
全身倦怠感 めまい ふらつき 尿量減少 手足のむくみ |
利尿薬 | フルイトラン ナトリックス ダイアート ラシックス ルプラック |
利尿薬は腎臓からナトリウムと水を出すことで血圧を下げる。 降圧効果が比較的良好で安価。 |
高尿酸血症 めまい |
ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA) | アルダクトン セララ ミネブロ |
アルドステロンがミネラルコルチコイド受容体に結合するのを阻害し、カリウムを保持しつつナトリウム排泄を促進することで血圧を下げる。 | 手足や唇のしびれ 筋力の減退 めまい ふらつき |
β(ベータ)遮断薬 | セロケン テノーミン ハイパジール メインテート |
主に心臓への交感神経の作用を抑えて血圧を下げる。 狭心症や不整脈にも有効。 |
めまい ふらつき 頭痛 |
αβ (アルファベータ) 遮断薬 |
アーチスト アロチノロール |
主に心臓への交感神経の作用を抑えて血圧を下げる。 狭心症や不整脈にも有効。 |
めまい ふらつき 頭痛 |
α(アルファ)遮断薬 | カルデナリン | α遮断薬は血管への交感神経の作用を抑えることにより血圧を下げる。 糖・脂質代謝を改善し、前立腺肥大の症状にも有効。 |
めまい、頭痛 眠気、脱力感 動悸 |
生活習慣の改善
1) 食塩制限 6 g/日未満
2) 野菜・果物の積極的摂取*
コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える
3) 適正体重の維持:BMI(体重(kg)÷[身長(m)]²)で25を超えない
4) 運動療法:
心血管病のない高血圧患者が対象で、有酸素運動を毎日30分以上を目標に定期的に行う
5) アルコール制限:
エタノールで
男性は20~30 mL/日以下
女性は10~20 mL/日以下
6) 禁煙
生活習慣の複合的な修正はより効果的である
*ただし、野菜・果物の積極的摂取は、重篤な腎障害を伴うものでは、高カリウム血症をきたす可能性があるので推奨されない。
また、果物の積極的摂取は摂取カロリーの増加につながることがあるので、糖尿病患者では推奨されない。
(高血圧治療ガイドライン2004より)