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診療科・部門

診療技術部門

臨床工学部

臨床工学部は高度医療になくてはならない生命維持管理装置(人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置)の操作や各種医療機器の保守・点検をしている部門です。国家資格を取得した専任の臨床工学技士が従事しています。

当施設は循環器専門病院として最先端の治療を行っております。
その中でチーム医療を遂行するために高度な専門知識を必要としています。
そこで、各学会や勉強会での研究発表を積極的におこない、患者さまにより良い医療を受けて頂くため、日々努力していきます。

臨床工学部 ご挨拶

当院では2017年4月現在、6名の臨床工学技士が在籍しています。心臓カテーテル、人工心肺、急性血液浄化療法等の急性期から,心肺運動負荷試験に携わるリハビリ期、さらには在宅治療に至るまで幅広く業務を展開しています。ペースメーカや在宅人工呼吸器業務では、直接患者さまと接し、治療についてだけでなく、日常の出来事等も踏まえてコミュニケーションを図っています。

我々が常に心掛けている事は“挑戦”です。現状に満足することなく向上心を持って仕事に向き合い、24時間365日、質の高い診療補助業務を行うことを目標に全員が業務に全力を注いでいます。

当院に足を運んでくださった患者さまに常に寄り添い、患者さまの生活の質の向上のため今後も突き進んでいきたいと考えています。

平成29年6月吉日 臨床工学技士長 山本基善

主な業務

心臓カテーテル室業務

心臓カテーテル室(以下カテ室)とは心臓など血管の内科的手術室のことを言います。
カテ室では、カテーテルと呼ばれる管を腕や足の血管から挿入して、心臓に栄養を与える冠動脈や足の血管、透析患者さまのシャントに対して検査や治療を行います。カテ室での臨床工学技士の役割は患者さまの生体情報のモニタリング、異常時の早期発見や報告、緊急時の対応を行います。血行動態が不安定な場合は補助循環装置を操作します。手技に使用される機械の操作、物品の準備などを行っています。

心臓カテーテル検査

検査では、診断用のカテーテルを用います。循環動態検査(心内圧測定・心拍出量測定)、造影検査(冠動脈造影・左室造影・大動脈造影)にて評価します。
臨床工学技士はポリグラフと呼ばれる機械の操作を行います。ポリグラフでは、心電図や圧測定、患者さまの生体情報のモニタリングを行います。他には手技の記録や手技に使用される物品を術野に出す業務を行っています。

心臓カテーテル治療

治療では、挿入したカテーテルの中を通して種々の器具を挿入し、血管拡張術、循環補助を行います。血管の狭くなっている部分にバルーンと呼ばれる風船のようなカテーテルを使用して血管の中を広げます。広げた部分が再び狭くならないようにステントと呼ばれる金属を入れます。病変部にバルーンやステントを挿入すると血行動態が変動しやすいので、臨床工学技士は特に注意して生体情報をモニタリングしています。

カテーテルアブレーション

心臓の拍動は心臓の電気信号によって起こります。不整脈とは正常でない異常な電気信号によって引き起こされます。
カテーテルアブレーションとは、不整脈を引き起こす異常な電気信号の発生源と考えられる心臓内の局所に、カテーテルの先から熱を加えることで焼灼を行います。不整脈の原因となる異常な興奮の伝導路を焼き切ることで、正常なリズムを取り戻す方法です。臨床工学技士は刺激装置や心内心電図の記録、3Dマッピングシステム(心臓を立体的表示する機器)などの装置使用して治療のサポートを行っています。

ペースメーカ関連業務
ペースメーカとは心拍数が少なくなった場合に人工的に心臓を刺激する機械です。この機械を植え込むことにより正常な心拍数を維持します。臨床工学技士はプログラマという機械を操作して、植込み時に刺激閾値、波高値、リード抵抗などを測定し患者さまの情報を得ます。これを元にして刺激部位やのPMの出力、感度などを設定します。植込み後にペースメーカが正常に作動しているかのチェックも行います。また、ペースメーカ植込みの患者さまの入院時もチェックしています。
ペースメーカに異常があった場合などの対応や、チェックも行っています。
外来業務
外来では、ペースメーカをはじめICD(植込み型除細動器)やCRT(心臓再同期療法)のデバイスに対するチェックや管理を行っています。臨床工学技士はプログラマを操作して、デバイスの動作や電池残量、設定が適切かどうかをチェックします。必要があれば設定変更を行います。また、遠隔モニタリングといって自宅にいても病院側でデバイス情報を得ることができるシステムも活用し臨床工学技士でその情報を受信し異常の有無をチェックしています。異常が見つかれば患者さまに病院に来院していただくように依頼しチーム医療に貢献しています。
人工心肺業務
人工心肺とは、外科的手術の間、患者さまの呼吸・循環を代行して生命を維持するシステムのことです。心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、大動脈疾患などの手術には、心臓の動きを止めた状態で静止視野確保を行っています。実際の機械操作・管理は、体外循環認定士の資格を持った臨床工学技士を中心とし、安全装置設置基準に基づいた人工心肺システムを用いて、より安全な医療を提供しています。
非人工心肺業務
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)の際、閉塞してしまった血管を迂回させる治療として、冠動脈バイパス術があり、その中でも人工心肺を使用し(on-pump )心臓を止めて冠動脈にグラフトを接ぐ方法と、人工心肺を使わず(off-pump)心臓を止めないで吻合する方法があります。人工心肺を使用しない場合、臨床工学技士はその手術室内の広範な医療機器の操作や事前の管理を行っています。中でも、手術中に出血した血液を回収・洗浄して、再度患者さまの体に返すことを可能とした自己血回収装置があり、この機械の操作も臨床工学技士が行っています。
その他、腹部大動脈人工血管置換術(Yグラフト)や、F-P(F-F)バイパス術、ETS(胸部交感神経切除術)等でも、様々な面で手術の進行をサポートしています。
ハイブリッドオペ室業務
当院では2016年3月より、ハイブリッド型手術室(:ハイブリッドオペレーションシステム)の稼動を開始しました。ハイブリッド手術室とは、カテーテルを使う内科的治療と外科手術による治療法とを一つの部屋で行うことができる手術室のことをいいます。(手術室に血管造影装置を統合させたもので、高画質な透視・3D撮影を行うことができます)これによって、治療方法の選択肢が広がり、低侵襲かつ効果的な治療の提供が可能となりました。ハイブリット手術室に関して、詳細「診療科・部門」の「心臓血管外科:ハイブリッド手術室」を参照してください。
ハイブリッド手術室では、主に腹部大動脈瘤や胸部大動脈瘤、大動脈解離に対する大動脈ステントグラフト内挿術のほか、ペースメーカ植え込み術、下肢静脈瘤に対する血管内治療や静脈抜去術(ストリッピング治療)も行われています。
ハイブリッド手術室における臨床工学技士の業務は、手術中に使用される様々な機器の準備や操作に加え、使用する治療デバイスの準備や、緊急時に必要とされる補助循環装置の準備を行っています。
補助循環業務

心臓は全身の血液を循環させるためのポンプ作用を行っています。しかし、その作用が不可能となった重篤な心不全の患者さまに対し、自己の心臓の機能が回復するまでの間、心臓のポンプ機能と肺の呼吸を代行・補助し、心機能の回復を待つ方法を補助循環といいます。当院では、緊急で搬送されてきた患者さまや、開心術の際にサポートが必要となる患者さまに対して、迅速な対応ができるよう、臨床工学部を含めチーム全員が取り組んでいます。主に使用されている補助循環装置は、以下の2つになります。

①大動脈内バルーンパンピング(intraaortic balloon pumping:IABP)

足の付け根の動脈から入れたバルーン(風船)を大動脈内に留置し、心臓の動きに合わせてバルーンを拡張・収縮させることで心臓の働きを助けることが可能になります。

②経皮的心肺補助(percutaneous cardiopulmonary support:PCPS)

生理的な循環には、心臓から拍出された血液が全身へ送られ、酸素を供給して二酸化炭素を回収し、再び心臓へ戻る体循環と、心臓に戻った血液が肺へ送られ、二酸化炭素を排出して酸素を補給し、再び心臓へ戻る肺循環の2種類があります。この心臓を中心とする2種類の循環が生みだすガス交換(酸素と二酸化炭素の交換)が生命維持には不可欠です。
PCPSは、極めて致命的な病状にある患者さまに対し、人工心肺装置で2種類の循環(心臓・呼吸)を代行して生命を維持しつつ、心肺機能の改善を図る手段です。両循環が十分に機能しない様々な疾患の方や肺自体に高度の障害を来たし通常の人工呼吸では生命維持が困難な方がPCPSを必要となる可能性があります。

血液浄化療法業務

ハイケアユニット(HCU)の看護師と連携して治療にあたります。
臨床工学技士は血液回路のプライミングや機器の準備、穿刺や血液回収、治療中の状態変化に対応します。
維持透析、持続血液透析濾過、そのほかエンドトキシン吸着や腹水濾過、血漿交換にも対応いたします。

治療対象の方
狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症などで、入院中の慢性維持透析の方
手術やカテーテル治療で、一時的に腎臓の機能が低下した方

内視鏡業務

検査にかかわる機器の動作点検、洗浄、消毒を行います。

  • 内視鏡システムの始業点検、終業点検
    内視鏡カメラや光源装置の動作チェックを行います。十分な光量があるか、モニターに写る画像の欠けや、色の偏りが無いかなど点検します。
  • ビデオスコープ動作点検、洗浄、消毒
    ビデオスコープの先端は、手元のダイヤルで前後左右に向きを変えます。給水・送気・吸引の各ボタンを押し、それぞれの動作をチェックします。
    検査後は流水でブラッシングを行い、消化管内視鏡消毒装置にセットして洗浄、消毒を行います。
  • 検査中のトラブル対応
    機器動作の不具合などがありましたら、原因をすばやく追及し、検査をスムーズに行えるよう対応します。
  • 検査中の補助
  • 超音波検査、胃瘻交換などの補助
在宅人工呼吸業務

心不全や睡眠時無呼吸症候群により在宅人工呼吸療法実施中の患者さまの、ひと月ごとの人工呼吸器使用データを解析しています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS : Sleep Apnea Syndrome)
眠っている間に呼吸が10秒以上止まった状態を無呼吸といい、無呼吸が7時間の睡眠中に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば睡眠時無呼吸です。
また、低呼吸は換気の低下と動脈血酸素飽和度が3~4%低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態です。

睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数を、無呼吸低呼吸指数AHI(Apnea hypopnea Index)と呼び、この指数によって重症度を分類します。
軽度 15>AHI≧5
中等度30>AHI≧15
重症 AHI≧30

人工呼吸器には、鼻のみ、鼻と口を覆うなど、数種類の大きさのマスクを装着します。
患者さまの呼吸に合わせて、人工呼吸器から空気を送ります。
人工呼吸療法は患者さまの協力が大切です。適切に設定された機器でマスクを正しく装着し長く使用できるかがポイントです。

心肺運動負荷試験業務(CPX)
心臓リハビリテーション部と臨床工学部が連携してCPX検査を行っています。
心電図、血圧、呼吸中の酸素、二酸化炭素の濃度を、計測しながら自転車(エルゴメーター)を漕いでいただきます。検査時間は20分程度です。心臓だけでなく、肺や運動に使われる筋肉の状態等を総合的に見て運動耐容能を評価します。
適度な運動の持続は肥満等の生活習慣病の予防だけでなく、末梢循環が改善し心臓の負担が軽減され、近年では高血圧、心疾患の方へも運動療法(心臓リハビリ)が推奨されております。しかし実際どの程度の運動をすればよいのかという点において、現時点での体力を評価し、心臓に負担無く安全に行える運動量の具体的な指導および運動処方をさせていただきます。
医療機器管理業務
院内の医療機器を中央管理及び固定部署に配置し、保守点検を行っています。保守点検計画を策定し、計画に基づき点検を実施しています。
・院内医療機器の数量を把握
・機器更新や廃棄、修理履歴の把握
・点検した医療機器を貸出することにより、使用中の機器トラブルの未然防止
・故障等トラブル時の対応
診療科・部門
ハイブリッド手術室