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2018年 謹んで初春のお慶びを申し上げます

2019年 新年のご挨拶

皆さま、新年あけましておめでとうございます。平成30年のご挨拶を述べさせていただいたのが最近のことに思えるくらい、あっという間に一年が過ぎました。昔、40才を過ぎたら時間が過ぎるのが早いよ…とおっしゃった先輩がおられましたが本当にそう感じます。

物書きを生業にされている方は別でしょうが、改まった文章を書くというのは本当にストレスを感ずるものです。浅学菲才であることがすぐに露見してしまいますから‥‥と自己弁護した上での今年のご挨拶ですが‥‥

昨年も当院では様々なことがございましたが、最も喜ばしかったことは重大な医療事故に見舞われなかったことです。ヒポクラテスの誓いの中に“患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない。”があります。これはすべての医療者に共通する想いであると思いますが、同時に達成することが難しい課題でもあります。どうしたら患者さんの不利益を招かないような医療ができるか‥‥当院でも毎月多職種が集って医療安全対策委員会を開催しています。ヒヤリハット事例の検討は有意義ではありますが、これは後ろ向き手法です。前向きに医療事故を減らすための方策はないか‥と言うことで、(業務の効率化と生産性を高める手法である)“プロセス・フロー・チャート(以下PFC)”作成を実施している施設の教えを乞うことにしました。これは定型的な作業に対しPFCを作成→標準化・可視化しておくことでミスを回避するための手法です。当院では一昨年から各部署で試行錯誤を繰り返しながらPFC作成に取り組み、緩徐はあるものの少しずつ形ができてまいりました。PFCは院内LANで共有化され部署が異なっても随時閲覧できるようになっております。想定外の事態が生ずることを100%避けることはできない…としても、本年もこの前向きな取り組みを発展させてヒポクラテスの誓いの実践に努めたい…と思います。

次に昨年の出来事としてご報告できることは、経皮的冠動脈形成術が通算で一万例を超えたことです。当院の開院が平成3年ですので足掛け27年を要して到達できたことになります。当院を信頼して治療を託して下さった患者さまに対して心より御礼申し上げる次第です。一万例達成の朗報は、昨年11月2日に北國新聞紙上やNHKの地域ニュースでも報道していただきました。その歩みを述べさせていただきますと、第一例目が平成3年6月5日、千例達成が平成11年11月2日、最初の千例に八年間を要しました。千例達成以降は年間平均500例のペースとなり昨年10月2日に一万例の節目を超えることができました。この間には様々な出来事があり、急性心筋梗塞治療時ではご期待に沿えない結果となったこともありました。他方、予想を超えた治療結果を得られることができて医者冥利に尽きる‥との感を得たこともございました。医療行為と言うものは治療例数を誇るものではあってはならないことを自覚しつつも次は十万例を目指して精進を重ねます。

簡単に十万例と申しましたが、今のペースだと十万例到達には180年かかることになります。最も若い職員でもその瞬間に立ち会うことはできません。不可能であることは知りつつも180年後は西暦2198年で、その時の日本の医療状況がどうなっているのか…非常に興味がわきます。漫画「ドラえもん」では22世紀の未来からやってきた設定になっていますから彼はいるはず‥((笑))まさか、ガミラス帝国の侵略を受けているなんてこともないはず‥(宇宙戦艦ヤマト(笑)) 医療の世界では10年~20年の周期でパラダイムシフトが起こっていますので今では想像もつかない世界となっているのでしょう。ひょっとしたら心臓は再生できるものとなっていて経皮的冠動脈形成術なんて過去の遺物になっているかも…

翻って180年前の日本は江戸時代で江戸四大飢饉の一つである「天保の大飢饉」の真最中でした。江戸時代後期の平均寿命は40才台前半とされていますが(出典不明)医療環境だけでなく社会環境が未整備であったために多くの方が短命で終わらざるを得なかった時代であったと考えます。ちなみに私は北陸出身ではないのですが、金沢大学に入学して当地で生活が始まった折、地元の方が大変な‥とか途方もない…ことを“てんぽな”と表現されることを不思議に思いました。物知りな方に伺ったところ「天保の大飢饉」に語源があると聞き“へぇー”と思ったことがあります。「天保の大飢饉」での最大の被害地は東北地方であったかと思いますが、当地でも相当な被害があったためこの表現が後世に残ったのでしょうね。

許された紙面も残り少なくなりました。本年も皆さまにご迷惑をかけるような“てんぽな”ことが起きないよう慎重に業務を行いますので引き続き当院をご愛顧下さい。皆さまにとって今年が幸多い一年となりますように祈念して新年のご挨拶とさせていただきます。

心臓血管センター 金沢循環器病院
病院長 池田 正寿