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新年のご挨拶

2024年 新年のご挨拶

終息宣言が出されたわけではありませんが、令和5年5月8日に5類移行となり世間もなんとなく過去の出来事みたいに捉え始めておられるのかなぁ…と感ずるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)です。令和6年は4年ぶりに少し穏やかに新年を迎えられているのでは…と推測しております。(原稿を書いているのは令和5年12月です。)

まずは令和5年の反省です。当院は平成3年開設の医療機関であり新興感染症に対し十分な対応が可能な設備は有しておりません。これを踏まえて細心の注意を払って日々の業務を遂行しておりましたが、散発的に院内でCOVID-19患者さんの発生が起こりました。発生時には職員一同が協力して対応しましたが、最前線の看護師・看護補助者の方々が最も過酷な日々を送られました。緊張の連続で士気も低下しかけたことと思いますが、離職せずに業務を続けていただいたことに感謝しております。

令和4年と令和元年を比較するとCOVID-19流行により各医療機関での患者数が1割減少した…と日本病院会から報告されています。当院でも同様の傾向がみられた時期があり、特に入院患者数が減りました。一般に病院収入の7割は入院による収益とされていますのでその時期は本当に苦しかったです。一般企業であれば総力を挙げて売り上げを伸ばすぞ…との大号令を発するのでしょうが、医療機関では少々憚られるところがあります。病院の収入を決める診療報酬制度は国によって決められており各医療機関が独自に設定できるものではないので当院の“売り”となる診療技術を磨き続けるとともに、情報発信と地域の医療機関の皆さまとの連携を更に推し進めていく必要があると認識しております。循環器内科では経カテーテルによる僧帽弁閉鎖不全症治療(MitraClip)や新しい補助循環用ポンプカテーテル装置(IMPELLA)を導入しています。経カテーテル大動脈弁狭窄症治療(TAVI)や右室内留置のリードレスペースメーカー(MICRA)治療件数、不整脈に対する心筋電気的焼灼術治療(Ablation)件数も着実に増やしてきました。心臓血管外科では低侵襲心臓手術(MICS)の定着や大動脈瘤に対するステントグラフト件数も増加させています。さらに増え続ける心不全患者数に対し院内各職種が協業して心臓リハビリテーションを推進してきました。長期療養病棟では自宅に戻れない維持透析患者さんや簡易型人工呼吸器装着患者さんの受け入れも積極的に続けております。

令和6年も新しい医療を地域の皆さまに提供できるように精進を続けたいところですが、平成3年開設の医療機関ではさすがに施設の老朽化が進んでおり運営上悩ましいところも多々出現しております。約5年前より施設の刷新を計画してきましたが、COVID-19への対応などもあり、具体化が進みませんでした。このような状況はグループの中核病院である浅ノ川総合病院でも同様でした。新しい入れ物は古い入れ物の踏襲では意味がありません。私たちはより価値の高い医療機関となるため両病院の統合について議論を重ねて参りました。令和6年を迎え統合計画は議論の段階を超えて具現化することになりました。新(最近のはやりではシンと書いた方がよいのか?)病院開設に向けて動き出します。開設にはまだ数年かかりますが、段階的にその道筋を公表できれば…と思っております。

個人的見解としては循環器専門病院であることには迅速で小回りが利くとのメリットも感じるのですが、患者さんの平均年齢層が80才超となった現在では併存疾患の関係からも総合病院であった方が患者さんの利便性は高まると思います。また、新病院は患者さんや職員の方々に益するだけでなく、これから医療に携わろうとする若い方々(医学生・看護学生を始めとするコメディカルの学生さん)にとっても魅力的なものでなければならない…と考えます。今後は次世代を担う方々も加えて建設的な意見を出し合い、プロジェクトを進めていくことになります。これは少々難しい作業です。金沢市内には大学病院を始め名だたる大病院が揃っています。人的要因や資金力を考え、これらの病院と差別化しないことには生き残りが図れません。失敗は許されない…と言うプレッシャーも強いのですが、新しいものを作る喜びもあります。

最後に……この原稿を書いている時にTVでは戦禍に苦しむウクライナやガザの方々の映像が流されています。泣き叫ぶいたいけない子供たちの映像には胸がふさがれますが、本当に泣きたいのは親世代以上の方々ではないか…と思います。かけがえのない親族友人を失い、築き上げてきた生活の基盤を失い、やり直すと言っても残された日々は多くない人々…泣きたくても涙を見せることが許されない人々の想いはいかなるものか……私には、争いを止める力がなく平和を祈るしかないことをやるせなく思います。

この一文を読まれた皆さまの令和6年が幸多いものであることを切に希望します。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

心臓血管センター金沢循環器病院
病院長 池田 正寿