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2018年 謹んで初春のお慶びを申し上げます

2020年 新年のご挨拶

皆さま、新年あけましておめでとうございます。時代は平成から令和に移り、(令和元年正月は存在しなかったので)今回が令和初の年頭のご挨拶になります。当院は平成3年に産声を上げました。本年5月で開院29年となります。患者さまや医療機関の皆さまより長年にわたりご支援をいただきましたお陰で業務を続けることができました。まずは深く感謝申し上げる次第です。

医療機関に限った話ではありませんが、事業を継続していくためには顧客の方々から高評価を受け続けていかねばなりません。一昨年になりますが、依頼を受けて石川県医師会会報「石川医報」に「評価」についての私見を投稿させていただきました。その後も折に触れて「評価」または「評価する」と言うことを考え続けております。「評価」は組織を映す「鏡」‥との言葉もあるそうです。私は片手間に考えるのみですが、世の中にはこれを仕事にしておられる方も多いと思います。是非ノウハウを授けていただきたいと思うのですがその機会もなく、成書やネット記事の拾い読みで考えを巡らすことしかできません。

高評価を獲得するための「組織としての取り組み」については開院以来試行錯誤を繰り返してまいりました。国内の先進病院の取り組みを自院に取り入れ「それなりの」成果は得られているのでは…と思います。ところで「組織」は「人=職員」で成り立っています。石川医報にも書いたのですが、人の評価を行う手法に未だ自信が持てないのです。当院の職員は当院の大切な財産です。職員個々の力を収斂させるための有用な評価方法を行っているのか迷いがあります。そもそも人間は、他人に自分の価値を決められることを本能的に嫌う生き物ではないでしょうか。

どの組織でも「公平」な評価制度の構築は難しく、「納得感」のある制度を構築することに腐心しているのではないかと思います。当院でも名村CEOの指揮の下で外部の専門家のアドバイスを受けながら評価制度を作り上げてきました。半年毎に各所属長が集まり、評価基準に基づいて下した結果を全体で話し合う場を設けております。職員に対する理解を深め合うことができることに価値があると思いますが、問題点としては1)基準はあるが、各所属長の評価目線を等しくすることが難しいこと…2) 部署内で複数の人間が評価しあって結果を出すことが望ましいが、容易な作業でないこと…3)専門職で成り立っている組織なので、潜在的能力があっても資格がなければその職に異動させることができないこと…などが挙げられます。今のところ当院では賞与時に職員の貢献度を反映させるための手段の一つとして活用しているのみです。

IT企業ではAI(人工知能)を活用して人材管理法を開発しているところもあるそうで、この技術を人的資源(HR=human resources)テクノロジーと呼ぶそうです。個人の細かなデータ情報(睡眠時間や心拍数なども!)を蓄積しておくとAIがアルゴリズムを用いて分析処理してくれる‥とか。人が人を評価するのでなく、AIが評価するのであれば主観が排除され公平感が担保されるのかも……でもこういった企業でもAIが下した判断は参考意見であって最終判断は人が行っているようです。AIは測定できないデータ(例えば創造性など)を加味した分析はできない…のがその理由だそうです。それにしても本邦以上に個人情報の保護に重きをおいている欧米でHRテクノロジーが受け入れられているのは驚きです。情報収集にあたってはその使用目的と範囲を説明し同意を得ているようですが‥‥

一般的に評価制度を設けている組織では、通常年初に個人の目標を設定させ、年末に実績を査定して評価を行っています。しかし、この設定では日々変わるビジネス環境に即応できないので評価制度を廃止する企業も出てきているとのこと。評価制度を廃止した企業では、日常的に管理職と従業員が対話を行って支援・育成を行い組織全体の業績向上をめざす手法を取り入れており、この手法を「エンゲージメント」と呼ぶそうです。なんだか一周まわって振り出しに戻ってきているように思いますが、「日常的に」というところが新しいのでしょうか?

中には驚きの方法で職員の評価を行い、賞与の一部を決めているところもあるようです。本邦の企業ですが、月末になると社員が集合し順次サイコロを振っていくのだそうです。例えば6が出れば基本給の6%が賞与に上乗せされていくのだとか‥‥こんな「運のみ」の評価法がよく受け入れられたものだと感心します。この会社では「人が人を評価することには限界があり、会社の方向性に個人が合わせていったら個人の主体性が失われていく。むしろ好きにやって、そこから生み出されたものが会社に還元されればよし‥」との考えで制度設計したとか。確かに同じ努力をしても報われるか報われないかの最終的なところは運頼みのところがあるのは事実ですが、残念ながら協業が必要とされる医療機関ではこの手法は採用できないと思います。

人のやる気を加速させたり減速させたりするのが「評価」です。「評価」をすれば必ず「不満」が生まれると思います。「管理者はあなたたちを評価するが、それはあなたと言う人間のほんの一部に点数をつけているだけです。それがあなたの値打ちのすべてではありません」と口にしても、私たちが拭いきれない「承認欲求」を満足させることは難しそうです。「上司の高評価」を目標とする職員を増やすのでなく、サイコロによる評価を採用した企業のように「顧客からの高評価」を目標とする職員を増やすことが大切です。

「成果」も大事ですが、「貢献度」も評価に取り入れて皆さまからの変わらぬご支持をいただける体制作りを考え続けていきたいと思います。本年も心臓血管センター金沢循環器病院をよろしくお願い申し上げます。

心臓血管センター 金沢循環器病院
病院長 池田 正寿