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血液浄化センター開設にあたり

金沢循環器病院 腎臓内科
浅香 充宏

 金沢循環器病院は平成29年10月30日に血液浄化センターを開設いたします。当センターでは、末期腎不全に対する透析療法に加え、必要に応じて血漿交換など透析以外の血液浄化療法を行うことも可能です。当院で従来から実施してきた心血管系疾患や透析シャントの狭窄・閉塞に対する血管内治療と並行して、維持透析を受けていただく事ができるようになりますので、ここにご案内いたします。

心臓の病気と腎臓の病気との関係 『心腎連関』について

 心血管系疾患と腎疾患との間には密接な関連があり、『心腎連関』と呼ばれています。心血管系疾患(心筋梗塞、心不全など)をお持ちの方は慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)を併発することが多く、逆にCKD患者さんは心血管系疾患に罹患するリスクが高くなります。心臓の機能低下が腎臓の機能に悪影響を及ぼし、逆に腎機能障害が心機能障害の原因となります。心臓と腎臓との間には、このような双方向性の関係が見られます。

透析患者さんにおける心血管系疾患管理の重要性

 CKDが進行し末期腎不全に至れば透析療法が必要となりますが、日本透析医学会の調査でも『心腎連関』の存在が明らかにされています。わが国の透析患者さんの死因の第一位は心血管系疾患であり、27.5%の方が心不全あるいは心筋梗塞でお亡くなりになっています。また閉塞性動脈硬化症に代表される末梢動脈疾患の発生頻度も高く、進行例では下肢に潰瘍や壊死がみられるようになります。心血管系疾患の適切な管理こそが、安定した透析生活を維持するための重要な鍵となります。

血液浄化センター開設までの経緯

 当院はこれまで、虚血性心疾患、末梢動脈疾患、さらには透析シャントの狭窄・閉塞に対する血管内治療(バルーンカテーテルによる病変部の拡張やステント留置)を数多く行い実績を積み重ねてきました。心血管系疾患をお持ちの方は、『心腎連関』によりCKDを併発していることが多いため、血管内治療のための入院期間中に、当院で臨時透析を行う機会も数多く経験してきました。このような経験を踏まえ、腎疾患と心血管系疾患を一括して管理することができる体制を構築すべく準備を進めてきました。

血液浄化センターの概要とその方向性

 当センターは、日本腎臓学会および日本透析医学会指導医の資格を有する管理者により運営されています。厳密な透析水管理のもとに、長期透析合併症の予防に有用であるとされるon-line HDF(オンライン血液透析濾過)を標準的治療法として導入しており、安定した維持透析を受けていただくことができます。また、透析シャントの閉塞や心血管系疾患の併発が見られた場合は、直ちに当院循環器内科医による最新の血管内治療を提供する事が可能です。必要に応じて血液透析濾過以外の血液浄化療法も行っています。血漿中の病因関連物質を除去するための血漿交換療法、急性薬物中毒に対する血液吸着療法、閉塞性動脈硬化症や難治性ネフローゼ症候群に対する血漿吸着療法(LDLアフェレーシス)などです。血漿交換療法は、抗糸球体基底膜抗体による急速進行性糸球体腎炎や抗ADAMTS 13抗体よる血栓性微小血管症など、血漿中の自己抗体が原因となる難治性の腎疾患に対して行われます。このように血液浄化療法の適応となる疾患は多様であることから、最新の治療を提供することができるように、安全で質の高いチーム医療を今後さらに推進してゆきたいと考えています。

 最後に、旅行や帰省で金沢へお越しの方に対する臨時透析にも随時対応致しますので、ご希望があれば事前にご連絡下さい。腎臓専門外来は毎週木曜日の午後に開設しております。何なりとお気軽にご相談下さい。