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患者満足度調査 結果のご報告

ご案内

当院では、平成28年3月に外来および入院患者さんを対象に満足度調査を実施しました。

ご協力いただいた患者さん、ご家族の皆様にお礼を申し上げます。
ここに、調査結果を報告いたします。

今回の調査を通じて、皆様から頂いた貴重なご意見を全職員で共有し、今後とも、より良い病院づくりに取り組んでまいります。

調査結果

患者満足度調査結果を振り返って

調査項目の個々の事項に対する分析については報告書を参照して下さい。ここではその結果を拝見した上での所感を述べさせていただきます。

私たちの生活の中には様々なサービス業が存在しています。医療機関もその一つですが、生命の根幹を扱っている業種であるだけに(多少の自負もありますが)究極のサービス業であると思っています。医療機関が提供するサービスとは、1)病気の診断と治療,2)療養環境の提供,3)疾病に対する啓蒙であると思います。1)は医師・薬剤師・検査技師・臨床工学士・理学療法士等が、2)は看護師・栄養士・調理師等が、3)は医師・薬剤師・看護師のみならず幅広い職種がそれぞれの専門性に応じて関わりあっています。さらに全体を包括する形で事務部門や必要物品・環境を供給してくれるあまたの外部サプライヤーが関与しています。これらすべての職種が協調して運営にあたることが可能となっていること…が医療機関としての最低限の出発点であると思います。現在石川県内には1000事業所に届こうとする医療機関が存在しています。その中でより高い満足度を提供できる医療機関となるためには何が必要なのかを私たちは常に考えていかねばなりません。

国民皆保険下で医療を提供している性質上、価格破壊を行って他者との差別化を図ることは許されていません。ですから、自分たちの技術を高めることで「同じ価格であってもより満足度の高いサービスを提供すること」を日々心がけることになりますが、これにも限界があります。生物である以上老化のプログラムを食い止めることはできないからです。俗に“神の手をもつ”と称される医師がいるとしても万人に満足してもらえる医療を施すことはできません。

どうしたらもっと満足度の高い医療が提供できるようになるのでしょうか?

最近の日本では“おもてなし”…と言う言葉がいたるところで聞かれます(ちょっと前は“もったいない”だった)。この“おもてなし”と“サービス”は同義なのかと言うと(その道のプロの方によれば)『違う』…とのことです。“おもてなし”…とは“サービス”を超えたところにあるものなのだ…とか。療養環境で言えば、清潔なシーツや病衣を提供することは当然の“サービス”で、“おもてなし”と呼ぶにはさらに何らかの付加価値をつけることができて初めてそれに値するものらしい。“付加価値”ってなんだ?何をすればいいんだ?…難しいです。第一、自分では付加価値をつけたつもりでも相手がそれを付加価値と認めてくれなければ“サービス”の領域から一歩先へは進むことができない。それどころか「付加価値」と認めて欲しい…なんて気持ちを抱くこと…そのものが“おもてなし”の精神に反するのではないか……

ところで、ほとんどの医師は基本なりたての若い頃は健康体です。作家の故遠藤周作氏は「医師は国家試験の前に上部・下部消化管内視鏡的検査,気管支鏡検査,試験的入院生活を受けるべきだ」と仰っておられた…と伺ったことがあります。「健康な人間に病気の人の気持ちがわからない…のは仕方がない(…いずれわかる日が来る)。しかし、病気の人がこれらの試練にあう時はどれだけ苦痛と不自由を味わうものかは若い健康なうちから知っておくべきだ…」とのご意見だと思います。確かに医療の世界では、サービスを提供される側と提供する側との間で、他のサービス業とは決定的な違いがあることは理解できます。例えば、勤務時間が終われば提供する側(我々職員)は職場を離れることできる=自由の身となるが、提供される側は(入院患者さんの場合は)医療機関に居続けることになる=自由が制限される…(外来患者さんの場合は)次の受診日を決められて(ある意味)拘束される=やはり自由が制限されることになる…。どの医療機関を選ぶかは提供される側に選択権があるものの自由が制限されることには変わりがない。その苦痛の度合いは、勇んで出かけて行ったレストランが満席で食事ができなかった時とは比べようもなくキツイものである。だからその苦痛や不自由を予め体験すれば、より提供される側の満足度を高める医療が実践できるかもしれない…………

氏のご意見に反論を唱えるものではありませんが、私には少し腑に落ちないところがあります。仮に苦痛を実体験しても私はまだ健康体であり、患者さんは病気のままではないか……と。

“我もまた 生に著(ちゃく)(ママ)する老人の 一人となりて リハビリをする  岡田独甫(敬称略)”

朝日歌壇より許可なく勝手に引用させていただいた歌です。この方は病気療養中のお坊さまだそうです。仏門に身を投じて日々生死を超えた世界の思索に勤しんでいた身でも病人になるとこんな気持ちになるんだよ……と諭して下さった歌だとするとストンと心に落ちるような気がします。

……同じ人間なんだ……提供する側と提供される側に線を引いてはならない。

私たちは人間としての当然の気持ちとして、憐みの心や慈しみのこころ…を持たねばなりません。患者さんに寄り添う気持ちは大切だと思いますが、医療を提供する側がその想いをあまりに前面に出してしまうと鼻につく不快な臭いが漂ってしまう可能性があるのではないか…と思います。いわゆる“上から目線”という類のもの……

当院をご利用いただける皆さまから“金沢循環器病院は良い病院だ”と認めていただける医療機関になりたい…だけど「あからさま」にそれを求めてはいけない……言うは易く行うは難し……まさに二律背反です。これが今回の満足度調査を拝見しての私の率直な感想であります。

心臓血管センター 金沢循環器病院
池田 正寿