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2016年 謹んで初春のお慶びを申し上げます

2016年 新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。皆さまお揃いでお健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます。
歳の初めのご挨拶は緊張感を伴うものですが、改まれば改まるほど思考が停止するのでいつものようにまとまりのない話になることをお許し下さい。

さて、今年…平成28年5月15日は当院が産声をあげて25年目の記念日になります。地方での医療崩壊が今も話題になりますが、金沢市近郊の医療資源は豊富です。その中で四半世紀生き残ってくることができたのは僥倖と言わねばならないかもしれません。当院を選んでいただいた患者さま、地域の医療機関の皆さまに厚く御礼申し上げます。

昨今は、テクノロジーの進歩により消滅するかもしれない職業の話が取り沙汰されることがあります。医療業界は大丈夫でしょうか?……昔は病気について知りたければ「家庭の医学」などの書籍に頼るしかありませんでした。ただ、一冊に全科の疾患を網羅していたため、一つの疾患に対する記載は限られた内容に留まっていました。現在は…と言うと、ネットを開けばより詳細な病気の情報が簡単に手に入るようになりました。今後もっと検索システムが進歩を続け、症状から診断に至るまでの精度がさらに高くなるではないか…と想像します。診断に留まらず、アンドロイドが進歩すると看護・介護の分野も省力化が図られるでしょう。治療の領域ではヒトの手を借りずに完了できる技術の出現は当分無理でしょうが、自動車の自動運転の完成が間近と聞いていますので数年後にはSF映画の中だけだった治療器具が実際に出現しているかもしれません。総じて、病院内の風景は様変わりするかもしれませんが、この業界からヒトの姿が消えることは、当分ないのではないか…と思います。

話は変わりますが、高齢化社会が進んだことで社会保障費の支出が高額になり国の財政を圧迫していることも昨今の話題です。人工知能・アンドロイド・ロボット医療器具の進歩は望ましい点も多いのですが、その導入には莫大な費用が必要で病院経営を圧迫するお荷物になり続けます。正月早々お金の話もなんですが、最新の医療環境を整備しようとすると簡単に億単位の資金が必要になります。その投資が回収できる前に更なる新技術が出現するためほとんどの病院は一般企業で言うところの「資金の内部留保」なんて不可能なのが現実です。より進んだ医療を提供したいが、ない袖は振れない…こんなジレンマに巷の医療者は困惑しています。完全自律型の人工知能が出現し、素材さえ与えれば3Dプリンターを用いて安価に製造できるようになる時が来れば導入のコストも下がるのかもしれませんが……

医療の進歩は様々な福音を与えてくれましたが代わりに高コストのツケを残しました。今春には医療費の改定がなされますが、現状ではマイナス改定は避けられない…と言われています。病院経営はますます苦しくなります。マイナス改定には限界があるので、その次に来るのは間違いなく患者さまの自己負担割合のアップです。私は国家や政府が無策である…とは思っておりません。進歩には必ず代償が伴うものであり(残念ではありますが)コスト増は当然の流れではないか…と考えます。当院でも最大限努力して患者さまの負担を少なくする医療の提供をめざし続けますが、皆さまにおかれましても自ら病気を招かぬように日々ご自愛いただきたい…と強く願う次第です。
1)悪い生活習慣は改める,2)安易な民間療法には頼らない,3)病気の芽は早めに対処して重症化させない…ことが肝要だと思います。

今年も皆さまにとって良き一年であることをお祈りして年頭の挨拶を終えさせていだたきます。

心臓血管センター 金沢循環器病院
病院長 池田 正寿