金沢循環器病院|循環器病|虚血性心疾患の治療

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経皮的冠動脈形成術

PCI(Percutaneous Coronary Intervention)

 動脈硬化で狭窄あるいは閉塞している心臓の血管(冠状動脈)を、体外から挿入したカテーテルを使用して開大する治療法で、一般に「PCI(Percutaneous Coronary Intervention)もしくはPTCA(Percutaneous Transluminal Coronary Angioplasty)」と呼んでいます。

 バルーン(風船)を用いて開大する方法、ステント(金属製のコイル)を血管内に植え込む方法、高速回転式のドリルを使って血管内を掃除したりする方法などがあります。

具体的には

 通常の冠動脈形成術は、1泊2日または2泊3日で行われます。カテーテルを挿入する動脈は、通常は右あるいは左の手首の血管(橈骨動脈)ですが、複雑な手技を要する場合には、太ももの付け根の動脈(大腿動脈)を使うこともあります。

 手術時間は拡張する病変の性状により異なりますが、早ければ30分程度であり、遅くとも90分程度で終了と考えて下さい。

 1泊2日で冠動脈形成術を行い、一か所の病変拡張を行った場合の費用は1,042,000円前後で、3割負担であれば312,600円です。しかし高額の医療申請を行うと、一般の方では90,000円前後のお支払いで済みます。また高齢者の方では、50,000円程度のお支払いとなります。
 当院の冠動脈形成術件数は年間600例であり、この症例数は東海北陸地区でトップクラスとなります。可能であれば、冠動脈が閉塞する前の狭心症の時期に狭窄血管の修復ができれば、心筋障害を回避することができます。

それでは、狭心症に対する基本的な冠動脈形成術の実際の手順を説明しましょう。

実際の冠動脈形成術の手順

  1. 前もって採血により、腎機能障害、肝機能障害、貧血などのチェックをさせていただきます。
  2. 病室にて待機し、手術30分くらい前にカテーテルを挿入しない方の前腕に点滴をいたします。術前の軽いお食事は問題ありません。尿道に排尿用のカテーテルは挿入しません。
  3. カテーテル検査室へ看護師と共に車椅子で移動。
  4. カテーテル検査室に入室し、カテーテル検査台に仰臥位(あお向け)で横になります。
  5. 看護師または臨床工学技士が心電図を胸に貼付します。
  6. 手首の刺部位の消毒をおこないます。
  7. 体の上に、デッキとよばれる清潔な布を掛けます。
  8. 手首の部位に局所麻酔をした後に、血管にシースと呼ばれる鞘の様な短いチューブを挿入します。径が2mmのチューブですので、挿入時に少し痛みがあります。
  9. このシースの中を、ガイドワイヤーと呼ばれる柔らかいワイヤー血管に沿って進行し、心臓まで到達します。
  10. このガイドワイヤーに沿って冠動脈形成術に用いるガイディングカテーテルが心臓の冠動脈の入り口に留置されます。
  11. 造影剤を冠動脈に注入して、狭窄部位を確認します。
  12. 冠動脈形成術用の細くて、先端の柔らかいガイドワイヤーを狭窄を認める血管に挿入します。 このガイドワイヤーに沿って、血管内超音波カテーテルを挿入して、狭窄となっている冠動脈の血管径、病変長、動脈硬化性状を評価します。これにより狭窄部を拡張する道具を決めます。
  13. 病変に応じたバルーンカテーテル(風船)を挿入し、病変部の動脈硬化による狭窄を押しつぶします。バルーンカテーテル拡張中は、一時的に冠動脈の血流が遮断されますので軽い胸部圧迫感を自覚する場合があります。
  14. バルーンカテーテルのみで狭窄が十分に拡張されない場合には、さらに冠動脈ステントと呼ばれる網目状のコイルを狭窄血管の内側から拡張して留置します。このステントは腐食することもはずれることもありません。
  15. 最後に血管内超音波で病変の拡張具合をチェックし、また血管造影を行います。
  16. すべてのカテーテルを抜きます。
  17. 手首から挿入されたシース(チューブを抜きます。その際に止血のため手首に圧迫帯を巻き、この圧迫帯を空気で拡張して、圧迫止血します。この圧迫帯は、時間経過とともに空気の圧力を下げますので、痛みが強い場合は、看護師に申し出て下さい。
  18. 車椅子で病室に戻ります。
  19. 帰室後は、心電図をチェックいたします。
  20. 冠動脈形成術後は、脱水にならないように十分な水分を摂ってください。病室での歩行は自由です。
  21. 約6時間後に、手首の圧迫止血帯をはずします。
  22. 点滴は、術後の脱水を予防する目的に翌朝まで続ける場合があります。

バルーン

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1.血管が狭くなっている部分に、カテーテルによりバルーンを進めます

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2.バルーンをふくらませ、狭くなっている部分に圧をかけて広げます

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3.バルーンを抜去したあと。血管が拡がりました

ステント

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1.血管が狭くなっている部分まで、ステントをのせたバルーンを進めます

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2.バルーンをふくらませることで、ステントも拡がります

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3.バルーンを抜去したあと、ステントは血管を拡げたままの状態を保ちます

バルーンとステントによる治療例(冠動脈造影)

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1.冠動脈左前下行枝に90%の狭窄病変が存在します(白矢印)これが治療のターゲットです

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2.狭窄部分にバルーンを進め、膨らませます
(実はバルーンにステントを併用しているのですが、現在のステントはX線では写りにくいので写真でははっきり見えません)

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3.狭窄していた血管はきれいに拡がりました

ロータブレーター

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先端部が高速回転します

 高速回転式ドリルといっても、カテーテルを通して血管の中を通るくらいの非常に小さなミニ・ドリルです。これはロータブレーター(Rotablator.....登録商標)と呼ばれる新しい治療手段です。

 図に見えるように、ラグビーボールのような形をした部分がドリルになっており、その先端部分にはダイアモンドが埋め込まれています。ラグビーボール状の部分が高速で回転することで、血管の狭くなっている部分を削って掃除し、血液が流れる通路を作ります。通常バルーン治療と併用し、血管の治療をより確実なものにします。

 ロータブレーターは、バルーンだけでは拡げることが困難な硬い狭窄病変などの場合に用いられます。この治療を選択するにあたっては、専門的かつ高度な臨床判断が必要です。

 また、医師ならば誰でもロータブレーター治療をできるわけではなく、豊富な臨床経験を有し専門訓練過程をマスターし、正式な認定を受けた循環器専門医に限られます。

ロータブレーターによる治療例(冠動脈造影)

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1.冠動脈左前下行枝、対角枝分岐部に狭窄病変が存在します (白矢印)これが治療のターゲットです

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2.ロータブレーターの小さなドリルが左前下行枝を治療中しているところです

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3.狭窄していた血管はきれいに拡がりました

薬剤溶出性ステント

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 バルーンによる治療にしてもステントによる治療にしても、体に負担をかけることなく比較的簡単に治療が行える点が長所ですが、残念ながら数ヵ月後に再び冠動脈の同じ場所が狭くなる再狭窄が少なからずあるという点が欠点でした。この再狭窄という現象は動脈硬化が同じ場所に再び起こって生じるのではなく、拡げた同じ場所で新たな血管内膜が血管内で増殖してくるために生じるものです。

 2004年8月から、この内膜増殖を抑制する薬剤がステント表面にコーティーングされた薬剤溶出性ステントが登場しました。このステントの登場により再狭窄は2-3%程度に抑えられ、長年悩まされ続けてきた再狭窄という問題がほぼ解決されました。この結果、従来冠動脈バイパス術の適応と考えられてきた難しい病変もステントによる治療が可能となってきました。現在では特殊な状況を除けばこの薬剤溶出性ステントが治療の第一選択となっています。

 しかしながら、どんな治療でも欠点は存在するもので、この薬剤溶出性ステントでは慢性期にステント内で血栓が生じやすい可能性があり、そのために少なくとも3ヶ月間は強力な血栓予防薬を服用する必要があります。観血的手術を予定している場合や血栓予防薬で副作用の出る場合には残念ながらこの薬剤溶出性ステントを使うことができません。この場合は従来のステントを使用することになります。

危険性は?

 開胸手術によらない非常に有効な治療法ですが、万能ではありません。病変部があまりに硬かったり、冠状動脈の屈曲蛇行が著しかったりするとバルーンやステントが病変部を通過せず不成功となる場合があります。

 いったん広がった血管が再び元の状態に戻ってしまったり、あるいは逆につまってしまったりする場合もあります。このような場合は、再度PCIを行いますが、くりかえしつまったり、不成功で終わった時は緊急もしくは待機的に手術を行わなければならなくなる可能性もあります。

 また頻度としては非常にまれですが、冠状動脈破裂といった合併症も緊急手術の対象となります。

退院後は? 

 退院後は引き続き内服療法を続けてもらい、3~6ヶ月後に、PCIを行った部分が再び狭窄をきたしていないか、再度心臓カテーテル検査を行います。

 バルーンの場合は40-50%、ステントの場合は20%前後、薬剤溶出性ステントの場合は2-3%の頻度で再狭窄がみられます。再狭窄がみられた場合はあらためて再治療を行います。

 心臓カテーテル検査と同様でこのPCIも従来は足から行っていましたが、当院では腕、特に手首からこの治療を行うことを主にしています。

 治療が終わった後は従来のように長時間足も動かさないで仰向けで寝ている必要性は全くありません。終わった直後から歩行可能ですし従って入院期間も非常に短縮されました(2泊3日で可能)。高齢者の方でも体の負担も少なく受けられる治療です。